箱に孔をあける
緑の中に木の箱を二つ、積み重ねるようにして置きました。
積み重ねられた木の箱の必要な場所に孔をあけることで、家となっています。
南側には最も大きな孔をあけて、光や眺望などを箱の中に採り入れています。
玄関
玄関ドアを開けて中に入ると、屋内に入ったつもりが、目の前には屋外の景色が広がっています。
木の箱の中には、屋内も屋外も区別なく収められて、一つながりの空間になっています。
玄関は片面すべてが、宙に浮いているような収納の壁になっていて、その上下が間接照明です。
またもう片面は、一枚の大きな鏡の壁になっていて、その映り込みで空間に広がりを持たせています。
写真真ん中、右側辺りの照明のスイッチは鏡の壁に直接付いていて、宙に浮かんでいるように見えます。
鏡の裏側には引き戸が隠れていて、必要に応じて、玄関とその他の場所を仕切ります。
内も外も収められた箱
ウッドデッキのテラスのような屋外空間も、屋内の部屋と同じように、木の箱の中に収まっています。
テラスは屋内の床と段差無しで繋がっていて、箱の中は屋内・屋外が連続した大きな一室空間になっています。
それと同時に、ガラスや可動間仕切り、階段や天井などによって、それぞれの場所はなんとなく分かれてもいます。
外の空気で間仕切り
屋外空間であるウッドデッキのテラスが、木の箱の奥の方まで入り込んでいて、外の空気を家の奥まで運びます。
箱の中は床に段差もなく、一見、大きな一室空間になっていますが、このテラスによって、なんとなく、それぞれの場所に分けられています。
通常は壁をつくることで小さな部屋に分割するわけですが、ここでは壁の代わりに屋外の空気によって間仕切りをしています。
大きな空間、それぞれの場所
木の箱の中は大きな一室空間になっていますが、天井の高さによっても、それぞれの場所をなんとなくつくり出しています。
また、屋外と屋内はガラスによって隔てられていますが、一方で、段差の無い床と上に抜けた天井は連続しています。
リビングと和室
和室はリビングと一体になっていますが、2階への階段によって何となく分かれてもいます。
また必要に応じて、可動間仕切でそれぞれを仕切ることもできます。
一方、窓を大きく開け放つと、周囲の緑と一体の空間になります。
内か外か、わからないぐらいです。
木の箱に収められているモノ
蛇行するガラスに囲われた室内と、中庭のように奥深くまで入り込んだウッドデッキのテラス、そして長さおよそ10メートルにもなる縁側。
それらのすべてが、段差無しの一つながりの空間として木の箱の中に収まっています。
天井の孔
天井のいくつかの場所には四角い孔が刳り貫かれていて、その下にそれぞれの場所をつくり出しています。
その孔のうちの一つが2階への入口になっています。
2階へ行くには、部屋の真ん中にある宙に浮かんだような階段をつたって、天井の孔へと消えていくようなイメージです。
階段の先には、さらにもう一つの孔があります。
光を採り入れ熱を逃がすために、トップライトを設置しています。
個室
2階は個室になっています。
室内と段差無しでつながったウッドデッキのテラスの先には、川沿いの風景が広がっています。
1階リビングの天井が高くなった部分の上を利用して、テラスに同じ材料でベンチをつくりました。
景色を眺めながら昼寝が出来そうなぐらい大きなベンチです。
吹き抜けで繋がる上下の箱
2階個室前には、ウッドデッキのテラスが部屋からそのまま段差無しで続いています。
そしてそのテラスは部屋の前から延びて、1階にあるウッドデッキのテラスと吹き抜けを介して上下に繋がっています。
上下に積まれた2つの箱は、それぞれ別々の場所になっているのですが、また一方で、繋がった一体の空間にもなっています。
単純で複雑
周囲の環境に調和した暖かみのある素材を使って、一見それとは相反するようなモダンな箱をつくりました。
自然のもののようにも見え、人工的なもののようにも見えます。
また、古いようであり、新しいようでもあります。
単純にして、複雑。
そのようなものを目指しました。
8年後
竣工後8年ぐらい経過した現在のお家を見せていただきました。
日々風雨にさらされて、痛んでいる部分も確かにありましたが、その分、風格のようなものは増しているように思いました。
外壁などに本物の木を多用しているのですが「メンテナンスフリー」をうたう人工的な建材等では見られない、時間を経過した末にわかる「本物感」でした。
自作の庭や内部の使い方など、隅々まで美意識にあふれていて、大変素敵でした。