閉じたイメージの外観
コンクリートの箱の上には、鈍く光るアルミの箱が載っています。
中へは、このアルミの箱から入ります。
この家の顔にあたる入口付近は、窓一つない、少し閉じた表情をしています。
それは、防犯のためやプライバシーを守るため等々の理由もありますが、それだけではなく、中へ入った時に広がる室内からの眺望との対比を考えて、わざと入口付近では、そっけない、閉じた表情をつくっています。
開かれた箱
アルミの箱の中は、二方向の壁が取り払われて、前面に広がる景色に向かって大きく開かれています。
天井も、床も、真っ白にしたことで、箱の中には、風景だけが飛び込んできます。
光沢のある白い床には、樹々の緑が映り込みます。
緑の上に浮かぶ
屋内と屋外とは、屋根が架かっているかどうかの違いでしかなく、
同じように、前面に広がる山の景色に向かって大きく開かれています。
家の中にいても、外にいても、まるで空飛ぶ絨毯で緑の上に浮かんでいるようです。
浮かび上がる照明
周囲が暗くなると、昼間は隠れていた灯りが天井に浮かび上がります。
照明器具はすべて、天井に掘り込むように設置されていて、明るい間はその存在が気になりませんが、夜になると光源の見えない光のかたまりとして天井に浮かび上がります。
ガラスの際には、カーテンボックスの中に設置された照明が光の帯をつくります。
必要な時だけ出す
大きなワンルームの一角がキッチンになっています。
リビング・ダイニングと一体になっているため、キッチン廻りの様々なものは、その時々で出したり隠したり、選択することが出来るようになっています。
黒く塗られた引き戸の奥には、大きな収納スペースが確保してあり、冷蔵庫もその中に収められています。
また、換気扇のレンジフードも吊戸棚の中に隠れていて、使う時だけ姿を現します。
天井に開いている穴には、照明や天窓が隠れています。
何もない広々とした場所で、必要なものを必要に応じて取り出せるようになっています。
ガラスの奥の階段
傾斜地に浮かぶように建っているため、普通の家とは逆になっていて、2階にあたるアルミの箱の方に玄関があります。
そして、ガラスの引き戸を開けると階段があり、そこからまるで地下に降りていくようにして、1階にあたるコンクリートの箱の中へと入っていきます。
屋内と屋外のギャップ
コンクリートの箱の上に載っているアルミの箱は、木造であるにもかかわらず、その中は真っ白で無機質な感じの空間になっていましたが、コンクリートの箱の方は、コンクリート打放しの硬い外観の印象に反して、中に入ると木を多用した柔らかい雰囲気の空間になっています。
屋内と屋外の雰囲気を、あえて逆にしました。
そのイメージのギャップを利用して、それぞれの空間をより印象的なものにしようと考えました。